2026年の新型コロナウイルスは、インフルエンザと同様に秋から冬にかけての季節性流行が基本になると予測されます。しかし、インフルエンザよりも変異の頻度が高いため、新たな変異株の出現によって、夏場など予期せぬ時期に流行の「波」が起こるリスクがあります。
施設内での発生は、地域全体の流行状況と連動するため、自治体の定点把握情報などに常に注意を払ってください。
高齢者施設において、新型コロナウイルスがこれほどまでに怖い最大の理由は、感染力と高い重症化リスクという点に尽きます。年齢、慢性的な基礎疾患(呼吸器、心疾患、糖尿病、認知症など)が重なると、肺炎へ進行し、重篤な状態になります。
ウイルス自体の高い感染力に加えて、高齢者施設は「閉鎖空間」「密接なケア」「集団生活」という、3密の条件が揃いやすいため、クラスター発生のリスクが極めて高くなります。
新型コロナウイルスは非常に感染力が高く、特に発症前後に感染性が強くなるため、気づいた時にはすでに周囲へ広がっている可能性があります。
一般的に2~5日程度(平均3日前後)とされ、前述のとおり感染者本人の発症前から高い感染力がある点が特徴となります。
近年、ワクチン接種のあり方や治療薬の状況が大きく変わっています。
2026年現在、高齢者を対象とした新型コロナウイルスワクチンは、秋~冬の定期接種(インフルエンザと同様の扱い)が推奨されています。ワクチンの発症・重症化予防効果は依然として高く、接種率の向上が施設全体の安全に繋がります。
早期に診断・投与することで重症化を防ぐ、複数の抗ウイルス薬(経口薬、注射薬)が実用化されています。往診医や嘱託医と連携し、早期治療介入ができる体制を整えておくことが重要です。ただし、費用が高い薬剤が多いため、医療費3割負担の方は特に留意が必要となります。
他のウイルス同様、症状のみでコロナウイルスと判断することは非常に難しく、初期は感冒(いわゆる風邪)とほとんど同じ経過をたどります。しかし、高齢者の場合、そういった典型的でない症状が出ることも多く、警戒が必要です。
<典型的症状>
発熱、咳、咽頭痛、倦怠感、鼻水・鼻づまり。以前に比べ、味覚・嗅覚障害は減りましたが、依然として見られることがあります。
<典型的でない症状(高齢者特有のサイン)>
あまり発熱しない感染: 高齢者は熱が上がらない、または微熱程度で済むことがよくあり、熱以外で症状を観察することが重要。
活動性の低下:「いつもより元気がない」、「食欲がない」、「血圧の低下」。これらの「いつもと違う」が何かの感染症かもしれない、という意識が重要。
飛沫感染、接触感染、そしてコロナウイルスで有名になったエアロゾル感染の3つに警戒が必要です。
1. 飛沫感染: 咳、くしゃみ、会話時のしぶきを吸い込むことで起きる感染。
2. 接触感染: ウイルスが付着した手で、目、鼻、口に触れる。ドアノブ、手すり、共有物品からの感染。
3. エアロゾル感染: 空気中に浮遊するエアロゾル(気体の中に混じっている微細な液体や固体の粒子)を吸い込むことで起きる感染。
新型コロナウイルスは、ノロウイルスなどとは違い、一般的な消毒用アルコール(消毒用エタノール)が極めて有効です。またエアロゾル感染のため、換気も重要となります。流行時や施設内に感染者(疑い含む)がいる際には特に注意し、感染拡大予防策を徹底しましょう。
石けんと流水で30秒以上しっかり洗い流す。ケアの前後、環境に触れた後は、頻繁にアルコール手指消毒を行いましょう。
アルコール消毒が非常に有効です。ドアノブ、手すり、共有物品、環境表面は頻繁にアルコールで拭き、清潔を保ってください。
新型コロナウイルス対策において、換気は極めて重要となります。エアロゾル感染を防ぐため、こまめに窓を開ける、HEPAフィルター付き空気清浄機を活用するなどして、常に空気を入れ替えてください。換気は30分に1回、1回5分~10分程度が目安となります。
スタッフの不織布マスク着用を徹底しましょう。利用者の方に対しての可能な範囲でマスク着用を促しましょう(呼吸苦や認知症等でマスクを嫌がる場合などは除く)。なお、様々な研究がありますが、マスク着用によりウイルスの吸い込み量は、状況による差異はありますが、50%以上低減させるという調査報告もあり、その予防効果は非常に大きいものがあります。
スタッフ自身の検温・体調チェックを徹底する。症状があれば、無理をせず休みましょう。
初期症状(一般的な風邪症状等)から隔離対応することが感染拡大予防の視点では理想となりますが、そのタイミングで隔離の判断をすることは難しいと思います。ただし、それらの方に対しても、感染を念頭に感染拡大予防策を徹底し、業務を行うことが重要となります。一方、すでに施設内に感染者がいる場合や、地域で流行している場合は初期から対応し、鼻水、咳、発熱または非定型症状が見られたら、医療機関と連携を取りつつ、検査結果を待たずに直ちに対応しましょう。
典型的症状や典型的でない症状に気づいた時点
① <施設内に感染者がいる場合・地域で流行している場合や、施設の運営上、初期から対応可能な場合>
咳、鼻水、発熱等の典型的な症状や「元気がない」といった典型的でない症状に気付いた時点
② <「①」が難しい場合>
症状が長引いたり、強くなった時点(38度以上の発熱頻度が上がっている等)
*連携先医療機関と相談しながら、判断を実施
1. 暫定的に隔離を開始
2. 汚染箇所があればアルコール消毒および徹底した換気
3. (連携先がある場合)医師へ報告し、指示を仰ぐ
(上記以外)症状に応じて、受診を検討。特に呼吸症状(「ゼーゼーと息をしている」、呼吸の回数が上がっている等)や活動性が落ちている場合は早期に受診
感染対策として、物理的な隔離が重要となります。また、皆さん自身を守るすべとして、ガウンテクニックをあらためて確認するようにしましょう。
感染が疑われる、あるいは感染した利用者様への対応は、個室管理が原則です。出来ればトイレも専用化しましょう。個室での対応が難しい場合は、ウイルスが存在する区域とそうでない区域を分ける「ゾーニング(区域分け)」を行います。対応するスタッフは可能な限り固定し、防護具(PPE)を着脱するポイントを施設内マニュアルに沿い、明確にすることが重要です。
スタッフ自身をウイルスの感染から守り、施設内に広げないためには、適切な防護具の正しい着用と正しい外し方が極めて重要です。
(各種動画が配信されているため、それらを参考にし、ガウンテクニックの再確認をお願いします。)
ケアにあたっては、マスクに加え、ガウン(または使い捨てエプロン)、手袋、フェイスシールド(またはゴーグル)を着用します。
咳込みが多い利用者様のケアなど、髪の毛が汚染される可能性がある場合はキャップも使用しましょう。
ケアの前後には、必ず手洗い、またはアルコールでの手指消毒を行ってください。
手袋: まず片方の手袋の手首部分(外側)をつまんで引っ張り上げ、裏返しながら脱ぎます。脱いだ手袋は、もう片方の手(手袋着用)で握り込みます。次に、素手になった手の指を、残った手袋の「内側」に入れ、汚れた外側が内側に包み込まれるように裏返して脱ぎます。
ガウン・エプロン・フェイスシールド: 表面にはウイルスが付着している可能性があるため、外側に絶対に触れないように注意しながらそっと外します。
マスク: 表面には触れず、紐の部分だけを持ってそっと外します。
ケアで出た廃棄物や外した防護具は、個別のビニール袋に入れて感染防止対策を講じて処理してください。
一般的には「発症後から一定日数(例えば5~7日間)」かつ「症状軽快後から一定時間(例えば24~72時間)」が経過したタイミングとなりますが、自己判断はせず、連携する医療機関と相談の上、解除を行ってください。
隔離解除の基準を満たした後であっても、しばらく(発症後10日間程度)はウイルスを排出している可能性があります。そのため、解除後も経過観察を継続し、特に密接なケアをした後の手洗い・アルコール消毒など、周囲への感染予防策は厳重に継続してください。
往診医や嘱託医に連絡する際、以下の情報をまとめて伝えてください。
□ 発症日時と経過(具体的時刻)
□ 症状の詳細: 発熱、咳、咽頭痛、倦怠感、鼻水・鼻づまり 、味覚嗅覚障害
□ 高齢者特有の症状: 食欲不振、元気がない、せん妄(ぼんやり、いつもと違う言動)、動きが悪い、血圧低下
□ バイタル: 体温、呼吸数、脈拍、SpO2(経皮的酸素飽和度)
□ 基礎疾患、ワクチン接種歴
□ 周囲の流行状況: 施設内、同フロア、同部屋で流行していないか
新型コロナウイルス対策は、5類移行後も、高齢者施設においては引き続き警戒が必要な感染症であるという認識をスタッフ全員で共有し、基本的な感染対策(手洗い、アルコール消毒、換気)を徹底することが求められます。感染への意識を高め、適正な管理により感染の拡大を最小限に留めるようにしましょう。