現場で役立つコラム きらり情報室|Kiraliaきらり|キラリアハイジーン株式会社

ヘルパンギーナ予防と感染管理|Kiraliaきらり|キラリアハイジーン株式会社

作成者: Kiraliaきらり|Jun 8, 2026 9:09:55 AM

ヘルパンギーナの流行について

 

ヘルパンギーナの流行は、明確な季節性を示します。毎年5月頃より報告数が増加し始め、6~7月頃にかけて流行のピークを形成します。その後、8月頃から徐々に減少し、9~10月にかけてはほとんど見られなくなるという推移を示します。地域全体の流行状況と連動するため、自治体からの定点把握情報などに常に注意を払うことが重要となります。

年齢層の偏りについて

患者の90%以上を5歳以下の乳幼児が占めています。その中でも1歳代の患者がもっとも多いことが特徴となります。

流行の推移

国内での流行は、例年西日本から東日本へと推移していく傾向があります。ただし、その流行規模は年によって異なるため、最新の発生動向を確認することが重要です。

 

ヘルパンギーナの特徴

保育施設においてヘルパンギーナがこれほどまでに広がりやすい理由は、原因ウイルスの性質と、感染力が持続する期間の長さにあります。

病原体について

ヘルパンギーナを起こす可能性のあるウイルスは複数あるため、一度かかっても、別のウイルスにより、再度ヘルパンギーナになることがあります。
※    ピコルナウイルス科に属するエンテロウイルス属の多数のRNAウイルス(主にコクサッキーウイルスA群など)が原因ウイルスとなる。

感染力について

症状がない潜伏期から唾液などに潜むウイルスは感染力を持ちつつ、さらに症状が強い急性期に大量のウイルスが鼻水などを介して排出され、感染が広がります。

潜伏期間について

一般的におおよそ2~4日程度と比較的短く、突然発症する点が特徴となります。

ウイルス排出の長期化

症状が回復した後にも、2~4週間という非常に長期間にわたって便からウイルスが検出され続けるため、保育現場で感染が広がる原因の一つとなっています。

 

ヘルパンギーナのワクチン・治療薬について

ヘルパンギーナの原因となるウイルスが多いこともあり、ワクチンや抗ウイルス薬といった特効薬は現在存在せず、治療の基本は対症療法となります。

対症療法

脱水症状を防ぐため、水分を摂ることが基本となります。また、発熱や頭痛などのつらい症状を和らげるために、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛剤を用いることがあります。

 

ヘルパンギーナ感染の症状(乳幼児特有のサイン)

他の夏かぜ同様、初期症状を見逃さないことが大切です。乳幼児の場合、典型的な症状のほかに特有のサインが出ることも多く、警戒が必要です。

典型的な症状

多くの場合、下記の流れで症状が発現します。
① 2~4日程度の潜伏期の後、突然38~40℃の高熱が出ます(通常1~4日程度で解熱)。全身倦怠感、食欲不振、咽頭痛、嘔吐などを伴うこともあります。
② 続いて口腔内(上あごやのどの奥)に直径1~5mmほどの赤みを伴う小さい水疱が複数出現し、これが破れて浅い潰瘍となり痛みを伴います。

乳幼児特有のサイン

・ 経口摂取不良
口腔内の強い痛みにより不機嫌になり、飲食が出来なくなることが多く、これが脱水症を引き起こす原因となります。

 

ヘルパンギーナの感染経路

飛沫感染、接触感染、経口感染(糞口感染)の3つに警戒が必要です。

  1. 飛沫感染:咳やくしゃみ、会話時のしぶき(飛沫)を吸い込むことで感染します。

  2. 接触感染:ウイルスが付着した手で、目、鼻、口に触れることで感染します。ドアノブや手すり、特におもちゃの共有からの感染に注意が必要です。

  3. 経口感染(糞口感染):便と一緒に排泄されたウイルスが口に入って感染することです。保育施設ではおむつ替えの際の手指を介した伝播が大きなリスクとなります。

 

感染拡大予防策①(手洗い・消毒・環境整備など)

一般的な感染対策を徹底することが極めて有効です。流行時や施設内に感染者(感染疑いの幼児含む)がいる際には特に注意しましょう。

手洗い

接触感染を防ぐため、流水と石けんでしっかりと手を洗うことを徹底しましょう。ケアの前後、排泄介助後は必須です。発症した乳幼児のおむつ交換を行う時は、排泄物を適切に処理し、便が付いたおむつや下着などに触れた後はすぐに手洗いしましょう。

消毒

ヘルパンギーナの原因となるウイルスは、アルコール消毒の効果が十分に得られにくい場合があります。そのため、汚染が疑われる場所や物品については、次亜塩素酸ナトリウムを用いた適切な環境消毒が重要です。

健康管理

特に流行時は、可能であれば、登園時の子どもたちの視診(口を痛がらないか等)や検温を習慣化してください。 

 

感染拡大予防策②(隔離の判断)

初期症状から対応することが感染拡大予防の視点では理想となります。保護者と連携し、直ちに対応しましょう。

隔離の判断

急な発熱や、口を痛がるなどの典型的な症状や、食事・水分をとらない、といった典型的でない症状に気づいた時点で隔離判断とします。特に園内や地域で流行している際は、早期に隔離を開始しましょう。

隔離判断後の流れ

  1. 暫定的に他児と物理的な隔離を開始。理想的には個室管理を行うが、困難な場合は、ゾーニング対応として、可能な限りスタッフは固定(必ずマスクは着用)。

  2. よだれや嘔吐物などで汚染された箇所があれば消毒と換気も行う。また、対応後は必ず手洗いを実施。

  3. 保護者へ報告し、かかりつけ医への受診を依頼。

感染拡大予防策③(隔離方法と解除の基準)

感染対策として、物理的な隔離が重要となります。また、感染拡大を防ぐためにも、おむつ処理の際は、便からの感染リスクが高いことを念頭に処理するようにしましょう。

 

隔離の方法

原則は個室管理となりますが、困難な場合は物理的に距離を離す等のゾーニング対応をしましょう。可能であれば対応するスタッフを固定とし、必ずマスクの着用をお願いします。

 

おむつ交換等の対応方法

感染が疑われる、あるいは回復後間もない乳幼児のケアにあたっては、便からのウイルス排出に備えた対応が重要です。

<対応時(着用時)>

  • おむつ交換のケアにあたっては、スタッフは使い捨て手袋や必要に応じてエプロンを着用します。

  • ケア後は、必ず流水と石けんで手洗いを行ってください。

<脱ぐ/外す時>

  • 手袋: 表面にはウイルスが付着している可能性があるため、外側に絶対に触れないように裏返しながら脱ぎます。

<廃棄時>

  • ケアで出たおむつや外した手袋などは、個別のビニール袋に入れて密閉し、感染防止対策を講じて処理してください。

     

     

登園再開の目安と注意点

<登園再開の目安>

一般的には、発熱が治まり、口腔内の水疱・潰瘍の痛みが和らぎ、普段通りに水分や食事がとれるようになれば登園可能と判断されます。医療機関の指示を仰ぐことが大切です。

<登園再開後の注意点>

登園再開の基準を満たした後であっても、しばらく(発症後2~4週間程度)は便からウイルスを排出している可能性があります。そのため、登園再開後もおむつ交換後の手洗いや適切な環境消毒など、周囲への感染予防策は厳重に継続してください。

 

医師や医療機関が欲しがる情報とそのタイミング

保護者に受診を促す際、保育中の様子として以下の情報をまとめて伝えていただくと、医師の早期診断や重症化予防に繋がります。

医療機関への報告(受診目安)項目チェックリスト

□ 発症日時と経過(具体的時刻)
□ 症状の詳細: 発熱、咳、鼻水、口の中の水疱 等
□ 特有の症状: 食欲不振、水分を摂らない、機嫌が悪い 等
□ バイタル: 体温、呼吸数(いつもより呼吸回数が多いか) 等
□ 基礎疾患:普段内服している薬の有無とその薬剤名
□ 周囲の流行状況:施設内や同じクラスでヘルパンギーナの流行状況

受診を迷った場合や夜間・休日の場合は、#8000(こども医療電話相談)に相談するよう保護者へご案内ください。

ヘルパンギーナは流行拡大のスピードが早い感染症の一つです。施設での感染対策を見直し、日々の細やかな観察と、各項目における適正な衛生管理で、感染拡大を防ぐとともに、子どもたちの安全な生活を守りましょう。