RSウイルスは、2026年も例年通り、春から感染が増加しはじめ、夏から秋(7月~10月頃)を中心に大きな流行が予測されます。しかし、秋が過ぎ、冬になっても流行が収まらない、あるいは通年を通して散発的な発生が続くことが多くなっており、従来の「冬の感染症」というイメージは捨て、1年を通して警戒レベルを維持する必要があります。
また、保育施設での流行が落ち着いた後に高齢者施設で発生するなど、地域全体での動向にも注意してください。
RSウイルスは、何度も再感染するウイルスです。健康な成人は軽症(鼻風邪程度)で済むことが多いですが、乳幼児や高齢者は重症化のリスクが高くなる傾向にあります。
特に生後6ヶ月未満の乳児、早産児、先天性心疾患や慢性肺疾患・免疫不全のある乳幼児は 重症化のリスクが非常に高くなります。 また、こういった基礎疾患がなくても、細気管支炎(細い気管支に起きる炎症)や肺炎を引き起こすと、入院での治療が必要になることがあります。
免疫力の低下、慢性的な基礎疾患(呼吸器、心疾患、糖尿病など)がある場合、肺炎へ進行して重症化しやすくなります。インフルエンザと比較しても重症化率、死亡率が高いという報告もあり、油断は禁物です。
感染から4~6日経ってから、症状が出始めるため、初期対応が後手にまわりやすくなります。
近年、高齢者向けのワクチンが登場するなど、状況が大きく変わっています。
・ワクチン: 2026年現在、乳幼児向けのワクチンはありませんが、妊娠時に母体を通じて、胎児にRSウイルスに対する抗体を獲得させるワクチンが実用化されています。
・予防薬(抗体製剤)*: 重症化リスクの高い乳幼児(早産児、心肺疾患児など)を対象に、抗体製剤が実用化されています。流行期間中に注射することで発症・重症化を防ぎます。
・ワクチン: 60歳以上の高齢者等を対象としたワクチンが承認・実用化されています。基礎疾患がある高齢者には、積極的な接種が推奨されています。
【*抗体製剤について】
抗体製剤はワクチンとは異なり、ウイルスと戦う抗体自体を注射しますが、ワクチンと同様に感染予防や重症化予防が目的となります。方法としては、RSウイルスの流行期間中に投与する形をとりますが、非常に高額な薬剤であり、保険適応も早産児や先天性心疾患がある乳幼児などに限られていますので、詳しくはかかりつけの小児科に問い合わせるようにお願いします。
RSウイルスの感染経路は、くしゃみ等を介する飛沫感染とウイルスに触れ、それが体内に入ることによる接触感染が主です。
咳やくしゃみのしぶきを吸い込むことで起きる感染
ウイルスが付着した手でおもちゃや手すりなどに触れ、そこを触った手で口や鼻を触ることで起きる感染
初期症状は基本的に風邪と区別がつきません。一方、重症化を予防することで、感染者の入院等を防ぐだけでなく、さらなる感染拡大の予防にもなるため、そのサインを早期に見極めることが重要となります。
発熱、鼻汁、咳など、一般的な「風邪(感冒)」と同様
・共通: ひどい咳、ヒューヒュー・ ゼーゼーという呼吸音(喘鳴)、呼吸が荒い、肩で息をする、顔色・唇の色が悪い(チアノーゼ)。
・乳児: ミルクを飲まない、活気がない
・高齢者: 食欲低下、いつもと様子がおかしい(出来ていたことが出来ない等)
健康な成人では、RSウイルスにかかった際の症状は通常、感冒様症状のみですが、RSウイルスに感染した乳幼児や高齢者を保育/介護するスタッフ様が一度に大量のウイルスに曝露されて感染することによって、症状が重くなる場合がありますので、日ごろからの感染予防が非常に重要となります。
ノロウイルスなどとは違い、RSウイルスは一般的な消毒用アルコール(消毒用エタノール)がしっかり効きます。また次亜塩素酸ナトリウム による消毒も有効となります。
接触感染予防のため、石けんと流水で30秒以上しっかり洗い流す。
RSウイルスは、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が有効です。ドアノブ、手すり、おもちゃなどの共有物品は頻繁にアルコールで拭き、環境を清潔に保ってください。特に感染者がいる場合は、念入りに行いましょう。
特に施設内で感染が流行している時は、飛沫感染・接触感染を予防するために、マスク着用を徹底しましょう。また、塵埃感染ほどではありませんが、部屋の換気をこまめに行うことで感染拡大予防の効果があります。
初期症状は通常の感冒と似ているため、初期の段階で隔離判断をすることは非常に困難になりますが、以下の強い症状が見られたら、直ちに隔離等の対応を実施してください。
園児や入居者の症状に気づいた時点。
① <可能であれば>
咳、鼻水、発熱などの感冒症状がある場合
② <「①」が難しい場合>
ひどい鼻水、激しい咳、呼吸がゼーゼー・ヒューヒューする(喘鳴)、ミルクを飲まない・食欲がない、高熱といった強い症状がある場合
判断基準に沿い、暫定的に隔離を開始
隔離方法は原則として、物理的に隔離する/物理的に距離を取る方法が主となります。
原則は個室管理となりますが、困難な場合はゾーニング、ベッド間隔を空けて対応しましょう。対応するスタッフを固定として、必ずマスクを着用しましょう。オムツ替えや鼻汁処理のあとは、特に念入りに手洗いを実施するようにお願いします。
法令で定められた隔離期間はありませんが、呼吸器症状(特に咳や鼻汁)がほぼ消失し、食欲なども戻ってから解除実施を目安としましょう。
症状が治まっても、ウイルスは排出され続けています(発症後、約1~2週間排出)。そのため、隔離解除後も、特にRSウイルスにかかった後の乳幼児や入居者に接する際は、手洗いの徹底を継続してください。
医療機関で診察もしくは医師等へ相談の際は、医師が迅速に診断・指示を出せるように、下記の情報を一緒に伝えるようにしましょう。
RSウイルスは、通年化しているため、1年を通して手洗い、アルコール消毒、換気といった基本的な感染対策を徹底することが求められます。平時より感染対策をすることで、その影響を最小限に抑えることが可能となりますので、ぜひ一度対策の確認・見直しを行いましょう。